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「教えてください、白鳥館長」
−芹沢銈介美術館館長に聞く、芹沢銈介作品の魅力とは−


6、縄のれん文のれん(1955年)


staff 栗田)これは芹沢先生の作品の中でも一番知られているものではないでしょうか。私も静岡にお嫁に来たばかりの時に、親戚のお家に必ずと言っていいほど「縄のれん文」の座布団があり、驚かされました(笑)。座布団カバーはショップでも一番尋ねられることが多い商品ですが、現在販売されていないのが残念です。こののれんは麻と綿のものが商品としてありますが、やはり一番人気です。
 
館長)そうですね。この作品は、人気がありますねえ。確かに、静岡での「芹沢模様」の普及率は高い。一般のお宅でもそうだし、お蕎麦屋さんとか、居酒屋さんとかでも座布団を見ますね。のれんを使ってくださっているお宅も多いですよね。そうだ、映画の寅さんシリーズの最新作「男はつらいよ お帰り 寅さん」でも「縄のれん」の座布団が使われていましたっけ!うれしかったなあ…(笑)。
 
栗田)紺地に白の単純な見せ方のようでいて「暖簾の中にさらに暖簾がある」という面白さがあって、くぐるのが楽しくなるのれんですよね。館長はこの暖簾の魅力は何だと思いますか。
 
館長)そうですね。「画中画」(がちゅうが)というか、「のれん中のれん」で、その驚きに、この作品の肝がありますよね。ちょっと謎めいた感じもあるし、いたずら心も感じる。まずそこがいいですね。普段垂らして使う縄のれんを、真ん中で絡げてあるわけですから、「さあどうぞ!」という、歓迎のサインだとは思うんですけどね。でも、どうなんだろう。縄のれんをからげて、必ずしも通りやすくなるわけではないですからね。ひょっとして、むしろあまり通したくないのか(笑)。何か、あれこれ考えちゃうような、どこか不思議な、謎めいた雰囲気があるんですよ。代表作の「天の字のれん」なんかも同じですが、作られたポーズがちょっとありえないほど念入りですしね(笑)。模様を見つめると、ぐっと足が止まっちゃう。「誰がこんなふうにしたんだ?」とか、「誰かそこにいるの?」と思ってしまうような、ちょっとミステリアスな雰囲気が漂っている(笑)。アート的な感覚が多分にありますね。でも、見方によっては、「さあ、いらっしゃい!」というような、大衆的な、元気のいい感じにもなりますからね。それこそ寅さんがくぐって出てきても似合うでしょう(笑)。
 
栗田)そうですね(笑)。縄の表現も写実的で、見入ってしまいますよね。
 
館長)とにかく芹沢先生の仕事って、守備範囲が広いんですよね。御滝図もそうですけど、ものすごく高級な和食店とかレストランでも似合う。芹沢先生の仕事には品格がありますからね。そうなると、とたんに「くぐりにくいのれん」になりそう(笑)。でも一方では、大衆酒場のようなのれんとしても粋(いき)でいいんじゃないでしょうか(笑)。オールマイティなんですよ。
 
栗田)外国の方もすごく気に入ってこののれんを買ってくださいます。おもしろさが共感できるんですよね。
 
館長)そう、グローバルでもありますね。日本という背景を離れてもOK。というか、そのほうがむしろ活き活きと見えるんですよ、セリザワは(笑)。あと、先生はもともと立体的な感覚も強い人だと思うんですよ。だから、平面の型染にも立体的な要素を入れている例が多い。布が翻る様で文字を表す「布文字」なんて、まさにそうですしね。漢字なんかも、一画ごとに線の重なりで表現したり。だから、縄などは格好の素材で、「縄文着物」とか、縄の両端が反対向きにとぐろを巻いている「縄文のれん」がある。それに包装紙には、紐(縄)でしばった様を表現している例もある。これはもうだまし絵みたいなものですよ(笑)。「縄のれん」だって、本来はのれんの中に垂直に縄を垂らして表現してもいいわけですよね。でも、そうじゃなくて、中央でザバッとからげてある。もっと立体的な、複雑なものに挑戦したかったんでしょうね。それにしてもすごいと思うのは、これがこともなげにまとまっていること。実用品としてもアートとしても、また格式の高い場でも大衆的な場で、双方で成り立つものになっていること。芹沢を「どっちつかず」のように思っている方も多い。そうじゃなくて、どっちでもいけるし、愛される(笑)。そこが芹沢のすごさなんだと、理解してもらえるようになるとうれしいです。
 
栗田)一般家庭の座布団やのれんとして、また高級レストランにも違和感なくあってしまう「縄のれん文」。芹沢芸術は驚かされることばかりです。
 
●掲載図録『芹沢銈介の作品2018』『五十の作品でたどる芹沢銈介八十八年の軌跡』

7、風の字のれんはこちら!
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