静岡市立芹沢げ霹術館museumshop (ミュージアムショップ)の公式オンラインショップです。


「教えてください、白鳥館長」
−芹沢銈介美術館館長に聞く、芹沢銈介作品の魅力とは−

 
 4、立涌幾何文(1956年)


staff 栗田)「立涌幾何文」はモダンな幾何学模様で、和にも洋にも合う柄ですよね。ショップにも70センチと130センチ幅の風呂敷があり、若い人を中心に人気があります。
 
館長)人気があるというの、わかります。色も落ち着いていますしね。
ある意味、ものすごく強くて目を引くんだけど、不思議と品と落ち着きがある。それが芹沢先生の模様の特徴ですよね。私は、その風呂敷をお坊さんが使っているのを見たことがありますが、まさにぴったりでしたよ(笑)。まあ、なんとおしゃれなお坊さんだろうと(笑)。女性の方でスカートに仕立てた方もいて、それもまた素敵でしたよ。
 
栗田)お坊さんも使われていたとは。 帯に仕立てられたという女性の方もいらっしゃいました。どんなジャンルの方にもおしゃれになりそうですね。
 
館長)そう、あとトートバッグとかランチバッグに仕立ててもいいかも、とか、ついついあえこれ考えちゃう模様です。立涌文(たてわくもん、たちわきもん)というのは、古くからある日本の伝統文様のひとつで、水蒸気や雲気が立ち昇る様を意味するといわれますね。そして、曲線の内側には、雲や、菊、藤、松などが置かれるのが定番。一見して、もう和の模様ですね。でも芹沢先生は、波打つ曲線のなかに幾何学文様を置いた。これで一気に文様がモダンな印象になったんですね。でも、その幾何文は刺し子風の表現。そのため、手のぬくもりを感じさせて、冷たい印象はないですね。ここもポイントだと思う。着想のもとは伝統のものですが、それを借りて、全く新しい作品を作っている。というより、芹沢先生の意識からすると、立涌文を、現代生活にあうものにアレンジしたという感じかもしれませんね。それが違和感なく、暮らしにフィットして、しかも愛されているわけですから、芹沢先生も喜んでおられるでしょうね。
 
栗田)伝統的な文様をヒントに、全く新しい芹沢模様が作られていったのですね。
 
館長)そう、そういう作品は多いですね。あと、模様の「使い回し」ね(笑)。芹沢先生は、積極的に模様を、いろいろな用途の間で、どんどん使い回していますよね。もちろん、そうすることで仕事や工房の商品の種類を増やせるという、合理的な考えもあると思うんですけど、本来「模様」というのは、それに耐えられるくらいのものでなければ、というような、強い考えもおありになったんじゃないかと思っています。
 
栗田)「使い回し」のできる模様なんて、デザインが完璧でないと成り立ちませんよね。この模様は主にどんな用途に用いられていたのでしょうか。先日の企画展「暮らしを彩るー芹沢銈介の生活デザインー」で展示されていた和紙に染めていたものも素敵でしたよね。
 
館長)この立涌文、芹美には、間仕切、カーテン地があります。それから今お話にあった和紙に染めたものは柏市の所蔵品で、展覧会のために拝借してきたもの。立派な額に入っていて、そのままさながら美術作品。でもそれは襖の腰張り用のようですよ(笑)。お客さんにそう説明すると、「ええっ?」といって、みんな思わず笑っちゃってました(笑)。全然そうは見えないですからね。
 
栗田)襖紙ですか! 立派な作品ですね。でもお家の襖に貼られていても素敵でしょうね。
 
館長)そうですね。でも模様を、ある用途に限定にしないというのは、すごいことだなあ、といつも思うんですよ。そこに模様が耐えられるというのもそうですけど、仕事に対する考え方、美に対する考え方がね。あれだけの模様で、額にいれたら上質な抽象作品になっちゃうんですよ。それが襖紙というんだから(笑)。でも、裏を返していえば、それだけ、「日々の暮らし」というものへの眼差しが、深くて真剣だったんだと思う。「美術館やお金持ちの家ばかり美しくなったって何になるか。ごく普通の人の暮らしが美しくならなければ。日々の暮らしこそ大切にしなければ」っていうのが、柳先生の主唱した民藝運動だったんですが、それを文字通り、真正面から実践したのが芹沢先生だったといえると思う。それは簡単なことではないですよ。芹沢先生ほどの才能がある人なら、うまく立ち回れば、もっと有名になったはずだし、もっとお金持ちにもなれたかもしれない(笑)。そして、芹沢銈介美術館にもバンバン人が来ていたかも(笑)。でも、そういう名利を求めず、日々の暮らしこそ大事なんだという考えのもとに、むしろそこにこそ持てるものを注ぎこんだ。これは大変なことだと思うんだけどなあ(笑)。でも、一般に、安いもの、身近なものに模様を提供したりすると、「ああ、その程度か」みたいな評価になっちゃう(笑)。でも、柳先生の民藝もそうですが、芹沢先生が目指したもの、美に対する考え方がそもそも違っていたんだから。そこを理解していただくと、芹沢先生の見え方が変わってくると思う。芹沢先生も、これから改めて評価されていくべき人だと思っていますよ。
 
栗田)素晴らしいですね。芹沢先生こそ「暮らしの美」を見つめ続けた人。もっともっと多くの人に芹沢作品に触れていただき、そこに気づいていただきたいですね。
 
●参考図録『芹沢銈介をめぐる30の物語』『芹沢銈介の作品(2010年)』

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